大学新聞社の社員は、個人用の名刺を持っている。白い厚紙に名前と連絡先、さらに本学の桜の印章が刻印された、なかなか立派なものだ。入部の折、初めて自分の名刺を手にした時の嬉しさは、今でもよく覚えている。
 ところで新聞社の性質上、名刺交換は社員にとって日常茶飯事と言っても過言ではない。私自身、取材や広告取引の際、あるいは映画の試写会場においてなど、いろいろな場面で名刺の交換を求められてきた。結果、この2年半の間に私が先方から頂いた名刺は30枚を超える。もちろん、枚数の多寡は問題ではない。年齢や職種が様々な人と、大学の枠を超えて関わるという「経験」を積めたことが重要なのだ。
 普段の生活では、会う機会のない人と言葉を交わす。その貴重な時間は、大学新聞社に所属していたからこそ実現できた。そして今、私の手元にある数々の名刺は、そこで出会った人々との「縁」の証となっている。引退を控えた私にとって、それは大切な思い出であると同時に、社員としての誇りなのである。(準)