たばこをめぐる社会の動き

 現在、世界的に喫煙の規制は厳しくなってきている。では、わが国におけるたばこ規制の現状はどのようなものなのであろうか。
 たばこは、日本において税負担率が最も多い製品のひとつである。その割合は1箱あたり60%以上を占め、たばこ自体の値段の割合よりも高い。1箱300円のたばこを買うと、国たばこ税71.04円(23.7%)、地方たばこ税87.44円(29.1%)、たばこ特別税16.40円(5.5%)、消費税14.29円(4.8%)を支払うことになる。
 これらのたばこ税は、国税地方税合わせて年間2兆円以上もの額になる。一見大きな金額だが、他国に比べると、日本のたばこ税率は格段に低いのだ。イギリスやアイルランドノルウェーなどのヨーロッパ諸国では、たばこの税率は80%に近い。販売価格も日本の2倍以上である。このように、多くの先進国では禁煙政策が徹底しており、消費抑制のために価格上昇政策をとっているのである。最近では、フランスが2002年から2003年にかけて50%もの値上げを実施し、消費抑制に一定の成果を挙げたとされる。わが国でも、昨年7月1日から1本1円(1箱あたり20円)値上げされた。とはいえ、他の先進国の半額に過ぎない、控えめな価格設定だ。
 日本は先進国の中では喫煙率が最も高く、「喫煙大国」と言われている。成人男性の平均喫煙率は減少傾向にあるが、45.5%と他の先進国に比べれば未だ高い状況なのである。
 そんな中、昨年「たばこ規制枠組み条例」が世界保健機関(WHO)の主導で採択された。この条約は「たばこ消費を削減、健康被害防止のために受動喫煙からの保護、たばこ広告の禁止・規制、未成年者からの隔離」などを定めている。ほかにも、パッケージの警告表示については、「消費者に誤解を与えるおそれのある形容的表示などを用いることによってたばこ製品の販売を促進しないことを確保し、主要な表示面の30%以上を健康警告表示に充てる」と規定。これにより、たばこの警告表示が大きく変わった。パッケージの表裏に「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」など、具体的に病名を挙げ、危険性をより強調した表現となったのだ。
 それに加えて、未成年者喫煙防止の気運も高まっている。1996年からの屋外自販機の深夜時間帯における稼働停止に続き、2008年より「成人識別装置付たばこ自販機」が全国で一斉稼働されるそうだ。これは、生年月日を記録した専用のICカードを利用することにより、未成年者はたばこを購入できなくなるというものである。また、カードには電子マネー機能も搭載される。利便性を高めることにより、たばこ離れを食い止める目的もあるのだ。日本たばこ協会によると、鹿児島県の種子島での実験では、喫煙による未成年者の年間補導件数が減少したという。だが、子供が勝手にカードを持ち出す可能性もあり、実効性を上げるにはカード管理が課題になりそうだ。
 このように日本においても、たばこ規制は着実に進められてきている。しかし、国際レベルと比較すると、まだまだ喫煙者に寛大な国であるといえるだろう。(小室真衣子)