[読書評]青い鳥 教師と生徒の心の交流

 いじめ、学級崩壊、自殺…。中学校を舞台とする本書は、こうした問題に生徒たちの目線で向き合っている。教育者ではなく子どもの目から物語を描き、どの世代の読者にも強い共感を呼び起こしている一冊だ。
 本書は8つの短編によって構成されており、全編通して登場する村内先生は、中学の国語の非常勤講師を務めている。小太りで髪の薄い、一見どこにでもいそうなおじさんだ。しかし、初めて彼が話すのを耳にした生
徒は必ず驚く。なぜなら彼が吃音であり、言葉がどもってうまく話せないからだ。ちょっとした会話でも息を切らし、顔を真っ赤にする時だってある。
 そんな村内先生が赴任する先には、様々な葛藤を抱えている生徒
が待っている。たとえば、学校で喋ることができなくなってしまった少女や、父親の死を受け入れられなかった少年。他にも、いじめによってクラスメイトを自殺にまで追い込んでしまった子もいる。村内先生は、重い現実に悩み苦しむ生徒たちのそばにいることで、彼らを救い出す。とはいえ救うといっても、何も大げさな行動をとるわけではないし、多くを語るわけでもない。それでも村内先生と接することで、彼らは自分なりの解決法を見出していくのだ。
 作中、村内先生がどもった言葉を、あえてそのまま表記している部分がある。読みにくいにもかかわらず、彼の言葉の一つひとつがすんなりと心に沁み入るから不思議だ。また著者自身も吃音で、教育を学んでいたということから、村内先生への思い入れの強さが感じられる。
 村内先生の教えには、中学生だけでなく大人にも通じるところがたくさんある。年齢に関わらず、ぜひとも多くの人に読んでもらいたい。(香)
重松清著 新潮社 税込1680円 2007年刊)