新たな視点で見る若者のマナー基準

  昨今、携帯電話の普及に伴い、そのマナーは大いに乱れている。例えば、電車内ではマナーモードに設定することや、優先席付近では電源を切ることがしきりにアナウンスされている。また、航空機内でも、携帯電話から発される電波が、航法機器などへ悪影響を与える可能性があるため、電源を切ることが常識となった。
 このように現在、あらゆる場面において携帯電話のマナーが問われている。それにもかかわらず、実際には電車内で周囲の目も気にせずに通話をする人は後を絶たない。そこで今回、公共の場のマナー(携帯から服装まで)がテーマとなった。そして、それらに対する意識の基準が何にあるかについての論文が募集された。
 しかしながら、作品の応募総数は5件と、例年に比べて非常に少なかったようである。各論文の審査は、永田良昭前学長をはじめとする9名により厳正に行われた。選考の対象となった作品は、いずれも似通った内容のテーマ設定が目立つ。だが、一方でその内容は、それぞれ、個性的で興味深いレポートに仕上がっている。
 最終的に優秀賞の栄光に輝いたのは、諸橋久美子さん(人文科学研究科哲学専攻博士前期課程1)の作品であった。彼女の作品は資料を多く活用し、電車内で化粧をする女性の増加と、女性の社会進出を関係づけるという、新鮮な切り口から文章を展開している。佳作には、神野妙子さん(人文科学研究科哲学専攻博士前期課程1)、努力賞として川島彩加さん(法1)が選ばれた。
 今年度の学生の提言について荒川一郎学生部長は「優秀賞となった作品は、自身の経験、新聞記事等をもとに分析を進め、最終的に『マナーとは他人に対する配慮である』という結論に導くしっかりとした論考が評価されました。佳作作品は、日本とフランスの文化の違いに起因するマナーの差を考察するという視点が斬新でした。努力賞は今年度初めて設けられたものです。優秀・佳作の2人の大学院生に伍して、身近なマナー違反から日本の社会制度に言及を試みた、学部1年生の努力が認められたのです」と語った。今回のテーマは、学生が身近にある携帯電話のマナーについて、再考する良い機会となったようだ。