街を歩いていると、店の入り口に補助犬の同伴可能を意味するステッカーが貼られているのを、よく目にするようになった。けれども、このような光景が私たちの間に浸透してきたのはここ最近の話である。
 補助犬とは目や耳、身体が不自由な人々をサポートする盲導犬介助犬聴導犬の総称だ。そのルーツは、およそ100年前のドイツにある。ポツダム盲導犬育成学校が成立し、そこからアメリカやヨーロッパに伝承した。こうして海外で補助犬が段々と普及していく中、日本でも平成14年に身体障害者補助犬法が施行される。
 それまで、日本ではまだ補助犬への十分な理解がなされておらず、犬の同伴は大抵敬遠されてきた。しかし、この法律が施行されたことで、公共施設や交通機関、さらにはデパートやホテル、コンビニなど一般の施設にも同伴できるようになる。これによって、外出の際に補助犬のサポートを必要とする人々が、今までより色々な場所に足を運べるようになる。また、今年新たに法律が改定され、仕事場に補助犬を連れて行くことが可能になった。仕事を持つことで、彼ら身体障害者のより一層の自立や社会参加の促進も期待される。
 法律が制定され、補助犬の存在が公に認められた反面、解決していかねばならない問題もある。その1つが、補助犬の頭数の少なさだ。今の日本では、1000頭程度しか活躍していないのが現状である。つまり、生活の幅を大いに広げてくれる補助犬を側に置きたくても置けず、いまだに不便を被っている人々が多数いるのだ。その他の問題点として、補助犬の育成には多大なお金を要することが挙げられる。立派に使命を果たせるような犬に育て上げるためには、それなりの訓練が必要とされる。一人前の補助犬になるまでに、約1年かかるのだ。その間に必要とされるお金は300万円前後。これらの課題を全てクリアして初めて補助犬育成の成功といえる。そのため、補助犬が社会に送り出される過程には、依然として難点が残っているのも、拭いきれない事実なのだ。
 身体障害者補助犬法制定後、映画やドラマで補助犬と人間の絆がテーマとして取り上げられることが増えてきた。これもまた、補助犬の認知度を上げる良い機会となるだろう。普段は接することのない補助犬かもしれないが、これを機に、是非多くの人々に理解を深めてもらいたい。
(田上ひかり)