栄光をその手に掴み取る トライアスロン同好会

 デュアスロンという競技はトライアスロンとは異なり、ラン、バイク、ランの順で競われる。泳ぐ必要のないこの競技で、加藤選手の力は最大限に発揮される。なぜなら、加藤選手は走ることに特化した練習を繰り返してきたからだ。
 ところがレースの2週間前、加藤選手はアキレス腱を痛めてしまう。「昨年、この大会では3位だったので、それよりも上位を狙っていました。それだけに足の怪我は不安材料になっていましたね」
 調子は最悪だった。プレッシャーも重くのしかかる。いつも通りに足を動かすこともできない。だが、そんなことを感じさせない好調なスタートを切った。
 満足な走りもままならない状況でも、加藤選手は冷静に周りの様子をうかがい、ペース配分をする。第1ランを3位で抜けると、ランの後でとにかく辛かったというバイクを迎えた。
 十分に練習もできなかったため、体力不足を招くもここで離されたら終わりだと、必死でペダルを漕ぐ。確実に体を蝕んでいく30㎞の道のり。それでも加藤選手は決して速度をゆるめなかった。
 42分間、先頭集団にがむしゃらに喰らいつき、最後のランへ。しかしこの時、足の痛みはすでにピークに達していた。さらにはスタミナも尽きかけていた加藤選手だったが、己の精神力のみを頼りに力走。今までトレーニングしてきたことが支えとなり、体を突き動かす。貪欲に走り続けた結果、前大会の順位から一つ上げての2位と、試合前の目標を見事に達成した。
 にもかかわらず、「悔しいです」と顔をしかめる加藤選手。納得のいくレースとはいかなかったようだ。そんな自分に厳しい加藤選手だが、最後には「次回は1位を取りたいです」と前向きに話してくれた。
 一方の松島選手には、世界大会にも出場しているという意地がある。「絶対勝てると思っていました」と、心には余裕があった。彼女は今大会の出場選手の中でも、トップクラスの実力を持っている。序盤で独走することもできたが、ドラフティングレースのことを考え、東海大の選手と2人で並走することにした。
 2人でほぼ同時に第1ランを走破し、次のバイクに臨んだ。多少出遅れたものの即座に巻き返す。そこからは激しいデッドヒートを展開。相手が前で走り、風よけになったことも幸いしてバイクで大きな疲労感は残らなかった。対する相手は大幅に足を消耗していた。それに気づいた松島選手は、最後のランで勝負を賭ける。力強いストライドで差を広げると、そのまま一気にゴール。
 終わってみれば3分差をつけての快勝で、自信に裏打ちされた実力を十二分に証明してみせた。松島選手は「勝ててよかったです。今年最後の大会を有終の美で飾ることができて安心しています」と、試合後に笑顔で語ってくれた。
 これから加藤選手は、一般のデュアスロン選手権で勝ち上がり、チャンピオンシップを目指す。松島選手は今年2月に開催される、過酷なアイアンマンレースに出場する予定だ。真のトライアスロン選手を目指し、彼らはまだまだ走り続ける。(山崎晃志)