家の鍵

監督 ジャンニ・アメリオ 出演 キム・ロッシ・スチュアート/アンドレア・ロッシ/シャーロット・ランプリング 2004年/イタリア/111分 配給 ザジフィルムズ
 父と息子。それはあまりにありふれていて、ごく自然な関係。だが、この映画に登場する2人は、どこにでもいるような親子ではない。
 父であるジャンニ(キム・ロッシ・スチュアート)は、15年前に恋人を難産で亡くしている。その際、障害を持って生まれてきた息子パオロ(アンドレア・ロッシ)をも、恋人を失ったショックから手放してしまう。15年という空白の後、息子の育ての親に、パオロをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設に送り届けるよう頼まれる。初めて会う息子に、どう接すればいいのか戸惑うジャンニ。そして送り届けた先で、彼は1組の母娘と出会う。障害のある娘を持つ母親ニコール(シャーロット・ランプリング)は、自ら心に闇を抱えつつも、ジャンニとパオロを温かく見守る。そして彼女とのかかわりの中で、ジャンニは様々な影響を受けていくことになるのだった。そんな時、あるきっかけからジャンニとパオロはノルウェーへと旅をすることになる。旅を通じて少しずつ、だが確実に二人の心は近づいていくように見えたのだが……。
 パオロを演じたアンドレア・ロッシは、実際に障害を持つ少年である。その彼が、驚くほどの自然な演技を見せたことで、この映画がより素晴らしい作品になったといえるだろう。ジャンニ役のキム・ロッシ・スチュアートとの会話シーンはどこかぎこちなく、15年という空白の時間の重みを感じさせる。表面上は明るく振舞いつつも、心の中には寂しさを抱えたパオロを演じる彼の演技に注目してほしい。
 この作品のタイトルである「家の鍵」は、映画を読み解くためのキーワードにもなっている。劇中でパオロがジャンニに、住んでいた家の鍵を見せるシーンがある。この「家の鍵」がどんな意味を持っているのか。それを考えながら観てみるのも面白いだろう。(新原大輔)