ワンダーフォーゲル主将 辺麦貴弘さん(法3)

 ワンダーフォーゲル部では、登山を中心としたアウトドア活動をしている。主将の辺麦さんは入部するまで、本格的な山登りを経験したことがなかったという。そのため1年生の6月、八ヶ岳に登ったのが、彼にとって正式な登山のデビューとなった。だがこの地で、その厳しさを思い知ることになる。
 当日はあいにく雨に見舞われた。それでも辺麦さんを含む6人のパーティーは山を登り始めていく。雨具を着ているため、動かしにくい体。虫が多い山の中では、思うように先へ進めなかった。さらに、食材やテントを背負っているため、20キロにも及ぶ負担が体力を奪っていく。これらすべてに辺麦さんは苦しめられた。
 1日目はテントで夜を明かしたが、次の日も天候は一向に回復しない。2泊3日の予定だったが、結局山頂まで登らずに2日目で切り上げることに。「山登りは楽しくないのかな」と思うほど、最初の登山は辺麦さんにとって後味の悪いものとなったという。
 登山に対して悶々とした思いを抱きながらも、8月の夏合宿を迎えた。目的地の屋久島までは遠い道のりだったため、登山の前から早くも気疲れしてしまったそうだ。またアクシデントもあった。木道で友人が足を挫いてしまったのである。一行は彼を気遣い、速度を落として歩くことになった。最終的にその日は計画通り進めず、予定外の地点でテントを張らざるを得なくなる。だが、そこで辺麦さんは様々な自然の姿を目の当たりにした。夕焼け、きらめく星、日の出……その美しい光景に感銘を受けたのである。「2度目の登山も大変でしたが、振り返ると楽しいことばかり思い出されます」と語る辺麦さん。今も活動を続けているのは、そのような楽しみがあるからだそうだ。
 登山は己の限界に挑戦するスポーツと思われがちだ。しかし辺麦さんは、山はパーティー全体で登るものだと考えている。それは状況に応じてペースを調整するなど、皆で力を合わせて頂上を目指していくためだ。彼は今後もこの信念のもと、山に登り続けるに違いない。 (中谷美穂)