裁判員制度のシステム

 2004年5月、国会で「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、公布された。これによって2009年5月までに裁判員制度が施行されることが決定した。この制度は、主に二つの理由から導入される。裁判をこれまでより迅速化させるため、そして裁判を国民にとって身近でわかりやすいものにするためである。では実際に、裁判員制度はどのように行われるのだろうか。
 この制度の対象となる刑事裁判は主に殺人、傷害致死、現住建造物等放火などの重犯罪である。従来これらの裁判では3人の裁判官によって判決が下されていた。だが裁判員制度においては、3人の裁判官に国民から選ばれた6人の裁判員を加え、計9人によって審判が行われることになる。
 裁判員の選出までにはいくつかの段階がある。初めに有権者の中から抽選で翌年の裁判員候補者を選び、各裁判所で裁判員候補者名簿が作成される。次に事件ごとに名簿の中からさらに抽選を行い、その事件の裁判員候補者が選ばれるのだ。この時点で候補者は裁判所から呼出状を受け取り、裁判所に出頭する。ここで裁判員選任手続きが行われ、候補者が裁判員として適格かどうかを判断される。また辞退希望者はその理由について質問されるという。この選任手続きの結果、その事件を担当する裁判員が選出されるのだ。
 原則として辞退することは認められないが、いくつかの理由、状況下においては認められる。具体的には、70歳以上の人、地方公共団体の議会の議員(ただし会期中のみ)、学生・生徒などが挙げられる。他にもやむを得ない理由(重い疾病・障害、同居している親族の介護・養育、社会生活上重要な用務等)によって裁判所に行くことが困難と認められた人は辞退が可能となる。
 こうした経緯を経て選出された人は、一審においてその事件の判決まで裁判員としての責任を負う。まず裁判員は裁判官と共に法廷へ向かい、証拠書類の取調べや被告人・証人に対する質問等が行われる公判に立ち会う。全ての証拠がそろったら、別室にて裁判官と裁判員による評議が行われ、被告人の有罪・無罪、有罪の場合は量刑について議論し、その結果評決が行われる。このとき裁判員の意見は裁判官と同じ重みを持つ。評決が決まると法廷で裁判長が判決を下し、裁判員の仕事は終了となる。公判から判決までは、通常は数日間、事件次第では長引くこともあるという。
 裁判員のプライバシーや私生活への影響については裁判所によって最大限考慮される。名前、住所等の個人情報は公開されず、また、裁判所に託児所を設けるなど、裁判員の負担が軽減されるような工夫がなされるそうだ。しかし裁判員には義務も課せられる。例えば、裁判所からの呼出状を正当な理由なく無視した場合や公判を無断で欠席した場合には10万円以下の制裁金が課されることがある。そして、事件に関する情報についての守秘義務も負う。
 このように複雑な仕組みを持つ裁判員制度。2年後の施行に向けて、我々は知識を深めておく必要がある。(筒井久実子)