学生たちの意識調査

 この裁判員制度について、学生にはどれだけの知識があり、またどのような意見を持っているのだろうか。その実態を把握するべく、本学の学生を対象にアンケート調査を実施した。
 まず裁判員制度を知っているかどうかの質問に対し、「名前も内容も知っている」と答えた人は全体の6割を越えた。加えて、「名前だけは知っている」と答えた人の数を含めた場合、裁判員制度に関して何らかの知識を持つ学生の総数は全体の9割にも及んだ。学生間におけるその知名度は、意外にも高かった。
 そうした中、制度導入についての賛否では「反対」を選ぶ人が6割を超える結果となった。新制度に対し、半分以上の学生が否定的にとらえているようだ。その理由には「法律の知識がない素人に判決を任せたくはないから」という内容が多かった。これはおそらく、裁判員制度自体が重犯罪の刑事裁判を対象としたものであることが理由であろう。そういった重要な判断を一般の市民に任せるという点が、大きな不安要素となっているようだ。しかし一方で、「賛成」と答えた人の中には「裁判への関心が高まる」との前向きな意見もある。新制度には国民各自の意識向上という面で、期待もあるようだ。
 さらに、制度施行による判決への影響力については、「大きな影響がある」「多少は影響がある」に全体の8割の回答が集まった。この理由としては「国民の直接的な参加により法廷に従来とは違う緊張感が生まれるから」というようなものが多く、民意に対して開かれた司法の場になることを予想するものが多かった。他方で、「あまり影響はない」と答えた人の中には「結局は法律の知識のある人間に判断が委ねられるのでは」との懸念の声がある。一概に皆がその効果を期待しているわけではないようだ。制度に対する信用度という点において、施行後の判決の一つひとつは実に重要なものとなってくるだろう。
 自分が候補者になった場合についての質問では、「断りたい」との意見が全体の過半数を占めており、参加に対し消極的な姿勢がうかがえた。そうした理由については「荷が重い」などが多く、一般人にとっての負担の大きさを指摘する回答が目立った。中には「加害者や被害者に恨まれたら嫌だから」という意見もあり、裁判員自身の安全について不安に思っている人も少なからずいるようだ。また、「引き受けたい」と答えた人の意見には「経験としてやってみたいから」というものもあり、興味本位での参加の姿勢も見られた。
 こうした内容を通して全体を見ると、裁判員制度に対する本学学生の見方は肯定的とは言いがたい。国民の参加が基本原則の制度であるがゆえに、辞退を願う人の多さには仕組みの危うさを感じてしまう。現時点では、学生にとっては酷な制度なのかもしれない。制度のより良いあり方を求めていくと共に、学生の裁判に対する意識も向上していくことが好ましいのだろう。(阿部遙)