連鎖する食品の安全問題

 現在、食の安全に対する信頼が揺らいでいる。今年7月に世間を騒がせた、ダンボール入り肉まん事件がその象徴だ。まるでフィクションのような事件であるが、報道直後は多くの人が、この問題が現実に起きたものと信じたに違いない。後に、騒動は虚偽報道であることが判明した。けれども、こういった不自然な事件の存在が信じられてしまうほどに、食に関する問題が次々と露見している。
 中国産の食品の安全問題については、以前から取り沙汰されてきた。今年に入ってからだけでも、アメリカで中国産のうなぎから発ガン物質が検出されたり、インゲンに基準値を上回る農薬が使用されていたりなど、例を挙げればきりがない。立て続けに事件が起きたため、日本をはじめ、世界各国で中国の商品に対する不信感が募り、今まで以上に強い非難の声が上がるようになった。確かにこれらの問題は、生産者のモラルの低さや、政府の監視体制の甘さなどが大きな要因となっている。そのため、中国側が責任を求められるのは仕方がないことであろう。
 しかし、事件を考察する際、中国の問題ばかりを追及するのではなく、他国の行動にも、騒動を引き起こす原因があったということを忘れてはならない。先進諸国の企業は、原材料や労働力の安さを追い求め、中国の市場へ続々と参入していった。そういった流れの中、農薬や抗菌剤などが中国に持ち込まれたのだという。利益を追求するあまり、安全を軽視した結果が、現在の危機的な状況を生み出してしまったものと考えられる。

学生に求められる食への心がけ
 食の安全への認識の甘さは、国内における企業の行動からも見受けられる。ミートホープの牛肉の偽装問題を皮切りに、消費者の信用を裏切るような事件が相次いでいるのだ。それらの事件を背景に、従来の効率性を重視した生産が見直され、減農・無農薬野菜など、安全性の高い食品が市場に普及するようになった。
 だが、残念なことに、必ずしも学生の食への意識が高まっているとは言い難いだろう。無理なダイエットや暴飲暴食、ファーストフードに頼りきった食生活など、私たちは健康とは反した行動をしばしばとる。「まだ若いから大丈夫」という言葉をよく耳にするが、この考えは早急に断ち切らなければならない。次世代を担っていくのは私たち若い世代である。その私たちが、食に関する危機感を持たず、このまま社会に出ることになれば、また同じ過ちを繰り返すに違いない。
 食は生きる手段であるだけでなく、ひとつの文化であり、楽しみでもある。生活の一部である食の安全が脅かされる今の状況は、危惧しなければならない由々しき事態であろう。これから食のグローバル化はさらに進み、事態がますます悪化する可能性もある。この現状に歯止めをかけるには、個々が食の安全への意識を高める以外に道はないのかもしれない。(経済学科2年 増井亮太)