[1面]進むグローバル化 大学が果たす役割とは

――就任おめでとうございます。今の率直な感想をお聞かせください。
 とにかく大変だということですね。世界は今、急速にグローバル化が進んでいます。学習院はもともと落ち着いた環境ではありますが、これからは時代の変化に沿って変革していかなければならないでしょう。
――今後、日本の『大学』が果たしていく役割とは何でしょうか。
 インターネット上ではリアルタイムに情報が行き来しているという現状、大学は地球世界という時代に位置しています。色々な可能性が現代の人々には与えられている一方で、外交や環境問題を初めとした様々な問題が世界には存在しています。そうした問題を捉え、解決できる人材を育成していくことが、これからの大学に課せられた使命であると思いますね。若い頃から見聞を広めるために、留学するというのも一つの方法です。大学は、そうした基本となる体制を整え、学生の障害と成りうるものを積極的に取り除いていく義務があります。
――では、具体的に本学はどういう姿勢を取っていくのでしょうか。
 従来の大学では、一人前に物事を判断できるという前提の上で、学生を扱ってきました。しかし、近年では与えられた物にしか反応しない若者が増えてきました。勉強離れがますます深刻化している傾向にあるのではないでしょうか。講義中心の授業の大半は、出席を取らないものが多いです。それを惰性という理由だけで出席しないのは、非常に勿体無い話ではありませんか。その状況を改善するために、私達は基礎演習を初年度教育と定義づけて、力を入れていきます。各々が4年間で学ぶ学問は、それぞれの学部学科で専門分野が異なります。けれど、それを通じて考察力や洞察力、問題の構造を見抜く力を身につけることは可能でしょう。初年度教育で、学生生活4年間の基礎を作ることが目的です。
――最後に、本学の学生に向けてメッセージをお願いします。
 学生にはとにかく『切磋琢磨』しろと言いたいですね。今は何でもクリックすれば情報が手に入る時代です。だからこそ逆に、今の若者は厳しい条件下にあるのかもしれません。ですが、与えられた状況のみをクリアするだけの学習では、いつまでも成長しませんよ。若い時代独特の感受性をもって、自分なりの世界の見方を作ってください。
――ありがとうございました。
PROFILE
福井憲彦(ふくい・のりひこ)
 東京大学文学部西洋史学科卒業後、仏政府給費留学生としてパリ第一大学に留学。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学文学部助手、東京経済大学経済学部助教授を経て、88年より学習院大学文学部史学科の一員となる。主な著書には『ヨーロッパ近代の社会史』、『近代ヨーロッパ史』がある。