[明窓浄机]

 子供の頃よく読んだ絵本の中に、『花さき山』がある。山菜を採りに山奥へやってきた少女あやは、見たこともないような綺麗な花畑に迷い込んでしまった。彼女はそこに住む山姥に、この花は人間達が自分より弱い者を想い、じっとこらえると一輪開くのだと教えられる―といったストーリーである。
 最近、久し振りにこの本を読み返してみた。すると、かつて以上の感銘を覚えたのである。良いことをすれば、どこかの山で美しい花がひっそりとほころぶ。それは誰にも気づかれない些細な存在かもしれない。だが、その花々は何よりも人の心を豊かにしてくれるはずだ。たとえ人目に触れなくても、常に優しさを忘れず忍耐強く生きる―この本は、そんなことを教えてくれた。
 しかし今の私は、そういった生き方がなかなかできないでいる。部活動や日常生活において、自分の行いを誰かに認められないとひどく不安になる。また、我慢や思慮が足りないせいで、周りを困らせてしまうことが多々あるのだ。
『花さき山』のあやは、花の存在を知ることで心の成長を遂げた。これからは私も、辛抱と思いやりの精神を忘れずに生きようと思う。そして、時折花さき山の話を思い出し、自分の胸の中にたくさんの花を咲かせていけるような人になりたい。(苺)