苦境乗り越え掴んだ栄光 ヨット部杉原健太郎さん(政3)

 杉原さんが初めてヨットに出会ったのは、入学直後のことであった。競技の内容さえも満足に知らなかった彼が入部を決意したのは、チャレンジすることに惹かれたからだ。「先輩方の全員が大学からスタートしたと聞き、新しいことに挑戦していく姿が魅力的に映りました」と、競技に取り組み始めるきっかけを語ってくれた。
 そんな杉原さんにとって、2年の秋季インカレは深く心に刻まれている。この大会で7位以内に入れば全日本大会に進出できるが、本学はここ20年間、あと一歩で出場権を逃してきた。だがこの年、2日目が終わった時点で、7位という好位置を維持。そして最終日を迎えたが、当日は強風が吹き荒れる悪天候であった。それにめげず、先輩とともに前へと突き進んでいく杉原さん。ところが、悪条件の中で精神・肉体の両面をすり減らしていた杉原さんはミスを犯してしまい、なんと船は転覆。「とても厳しい先輩なので、怒鳴り声が飛んでくると思いました。でも励ましの言葉をいただいて、ここから絶対に逆転するんだ、という気持ちが強まりました」と、その場面を思い起こす。その後、二人で船を起こして追い上げを図るも、さらにセイルが破損するアクシデントまで発生してしまう。それでも望みを信じ、最後まで必死に踏ん張り、ついにゴールへ到達。その瞬間、レスキュー艇に乗っていたコーチが本学の旗を広げた。念願であった、全日本大会への扉が開かれたのだ。
 競技終了後、杉原さんは先輩から「お前がいてくれてよかった」と声をかけられ、熱いものがこみ上げてきたという。「練習が厳しく、辞めたいと思ったこともありました。しかし、今までの苦労が全て報われたと実感しましたね」と感慨深げに振り返ってくれた。
 3年生となった現在、上級生の立場から部を支えている杉原さん。彼には、下級生との間で遵守していることがある。それは普段、友人同士のように仲が良かったとしても、プレー中だけは上下関係を崩さないようにすることだ。自己鍛錬と同時に後輩の指導にも尽力する杉原さんは、本学ヨット部を再び全日本大会へと導く。 (宮川雅志)