光る掲示板?

 試験日程や休講情報、はたまた学部別の情報を調べるために、掲示板へと足を運ぶ機会は結構多いはず。そこで気になるのは、一際目立つ電光掲示板。ぱっぱっと画面が変わる様を見て、不思議だなと思ったことはないでしょうか。
 従来のFAXを利用した掲示装置は、老朽化が進み故障も多くなっていました。さらにメーカーでは製造が終了してしまったので、それに伴い修理もできなくなっていたのです。そこで代わりに登場したのが、現在のプラズマディスプレイ。2005年12月に導入されたばかりということで、意外にも真新しいものなんですね。ちなみに、教務部教務課によって運営されています。
 メインで扱われる休講情報は、8授業日分を目安に表示し、基本的に毎日17時前後に更新しています。当日発生した緊急の休講情報も提供されるので心配いりません。画面は専用のプログラムによって、20秒毎に目まぐるしく切り替わっているんだとか。そのうえ、電源のon・offまで全自動。ハイテク技術がつまった賢いヤツだったんですね。なお、稼働時間は7時〜22時の間とのことです。これからもお世話になります。(桃)*[研究最前線]「CSRが導く新たな社会」 企業本来の在り方とは 経済学部経営学科 木谷宏特別客員教授
 今回は、経営学科の木谷宏特別客員教授です。先生の研究するCSR(企業の社会的責任)とは何か、そしてCSRは社会に何を与えることができるかについて、お話を伺いました。(取材・構成 下里豪平)
 勉強とは何か
 父親が軍人だったため、厳格な家庭のもとに育った先生。その父に警察官僚になることを勧められると、脇目も振らずに勉学に励んだという。
「今となっては大変愚かな考えなのですが、当時は勉強を一種の駆け引きや受験のための道具として捉えていました。学ぶこと自体の意義を全く理解していなかったのです。そのためか、大学に入ると何かネジが外れてしまったかのように、真面目に授業に出席しなくなりました」
 官僚という夢を諦めたものの、これからは食を通じた“心の豊かさ”が求められるだろうと先見した先生は、食品産業大手であるニチレイに入社する。その後の5年間を営業に没頭すると、企業派遣としてのアメリカ留学が待っていた。それを転機として、学びに対する先生の意識が大きく切り替わったのである。
ビジネススクールマーケティングを専攻する際に社会心理学を学んだのですが、これが大変興味深い分野でした。30歳になって初めて、勉強本来の大切さや面白さを思い知ったのです。学問とは、先人の知見を習得することによる小さな創造の積み重ねである、と。この見解が、現在の私の背景となっています」
 企業とステークホルダー
 企業の現場に戻り、人事や経営企画の責任者を経験した先生は、企業の本来の意義を問うようになる。企業とは、単なる利益獲得を目的とする組織で良いのか、と疑問を覚えたのだ。そこでCSRという概念を認識した先生は、社会心理学や人的資源論と繋がるこの分野を研究し始めたのである。
 この研究の領域は、とても広く捉えられているという。法令遵守といった面もあれば、社会貢献という意味も含まれ、さらに環境問題など多くのテーマを抱え込んでいる。そのため、現在はSR(社会的責任)という名の下で、領域の標準化が模索されており、USR(大学の社会的責任)の議論も始まっている。では、先生が考えるCSRとは、一体何なのか。
「簡単に言ってしまうならば、CSRとは、企業が自身を社会的な存在である、と認知することです。具体的には、企業というものが社会において独立しているのではなく、様々なステークホルダー(企業にとっての利害関係者)との関係の上に成り立っていると理解することですね。例えば顧客、株主、従業員、取引先、地域社会などがステークホルダーに含まれるでしょう」
 CSRの理想は、企業が様々なステークホルダーから求められている期待を分析し、対話を重ね実行していくことである。そしてその責務を果す過程で、企業と社会のより良い関係が構築されるのだ、と先生は語る。その他にも、ステークホルダーの分類や優先順位も、大切な一要素であるそうだ。
 CSRの可能性
 世界には様々な社会的な課題がある。それらの問題を解決するには、どうすればよいか。それは、自分たちが何をできるかを考え、実行していくことである。このマテリアリティと呼ばれる非常に理に適った考え方が、今後の社会の鍵であると先生は言う。
「現在CSRは、大企業にはだいぶ浸透してきています。規模が大きいほど、広い分野での社会的責任を果すことができるからです。しかし中小零細企業となると、事業範囲や資金面において、あまり力を注ぐ余裕がありません。だからこそ、これらの企業がコラボレーションして、各々にできることを補完していくべきなのです。それが大きな力となり、社会全体でのCSRの意識を高めていくのではないでしょうか。また、個人の力も重要です」
 今後私たちが社会人となる上で、CSRは確実に必要な知識となっていくのだろう。先生の研究は未来経済の指針となり、企業の在るべき姿を映し出している。
 PROFILE
1985年東京大学経済学部経済学科卒業・?ニチレイ入社。92年ジョージ・ワシントン大学大学院公共政策研究科修士課程修了、MBA。05年?ニチレイ総合企画部長を経て08年より現職。