日本新聞協会に聞く

 毎日決まって発行される新聞。だが、新聞というメディアについて、実は私たちはよく知らないのではないか。そこで、社団法人日本新聞協会の平野恭子さんにお話を伺った。
 最近、ある新聞社が捏造記事を載せ、批判の嵐にさらされるという出来事があった。それに対して平野さんは、「それは、新聞に対する信頼の裏返しだと思います。信頼は、新聞の命綱であり、100年以上かけて培ってきた資産です」と言う。同協会には紙面審査室というものがある。毎日、全国津々浦々の新聞に目を通し、「新聞倫理綱領」に違反していないかチェックしているそうだ。信頼できること。それこそが新聞の魅力といえよう。インターネットは確かに便利であるが、顔の見えないメディアである。一方新聞は、記者一人ひとりの責任感によって成り立っているのだ。
 それ以外にも、新聞にはインターネットにはない特長があると平野さんは言う。「新聞は何でも屋です。新聞を読むだけで、思いがけない知識を得たり、世の中にはこんなこともあるんだと、発見できたりしますよ。自分の関心ある事柄について、自分で掘り下げなければならないインターネットとは、そこが違います」。新聞のよいところは、1部の新聞の中に多種多様な情報が詰め込まれていることだろう。新聞を読んで、社会の片隅で起こった心温まる出来事を発見することもあるのだ。「新聞の役割は、巨悪を暴くというジャーナリズム機能だけではありません。こういった世相だからこそ、新聞をじっくり読んでみることが、私たちの生活に余裕をもたらしてくれますよ」。ちなみに同協会では、「HAPPY NEWS キャンペーン」と題し、読者の心を幸せにした記事を募集しているそうだ。誰でも気軽に、郵送もしくはインターネット上のサイトを通じて応募できる。
 さて、前述のような長所を持つ新聞だが、近年インターネットに押され気味だと平野さんは言う。「広告を例にとっても、企業はウェブ上の広告を重視するようになってきています。インターネットは、自分の関心のあることのみを見られるので、対象が絞りやすいんです」。そういう状況に追い込まれている新聞だが、業界は決してインターネットを敵視しているというわけではないようだ。むしろ新聞と、インターネットの利便性の相乗効果を高めていきたいと話す。「各新聞社のサイトは、無料で閲覧できます。新聞とインターネット上で配信されるニュースをうまく組み合わせ、受け入れてほしいですね」
 とはいえ、やはり現在、大学生をはじめとする若者の新聞離れが進んでいるそうだ。「まず、新聞について知ってもらわなければなりません」。そう語る平野さんは、大学生に対し、新聞の読み方についてアドバイスをくれた。「最初の方には難しい記事が多いと思いますが、1面から順に読んでいくようにすると、自然と頭に入ってきますよ。政治面や国際面など、ぜひ学生には読んでほしいと思いますね」。普段、馴染みの薄い分野の記事ほど、読み込んでいくと楽しいのではないかという。「地球の裏側で何が起こっているのかを知るだけでも、面白いと思います。前もって関心領域を決めてしまわずに、色々な種類の情報に接してみた方がよいですよ」
 また、新聞は毎日読むことに意味があるのだそうだ。「新聞の特徴は、日付のあるメディアであることです」と、平野さんは強調する。ある話題に関する記事は日々続いているので、毎日読まないと分からなくなってしまう。「新聞を読むのは面倒かもしれませんが、きっと後々役に立ちますよ。楽に情報を得られるメディアの方にばかり、目を向けないでほしいと思いますね」。平野さんは、最後にそう語ってくれた。
 普段私たちが何気なく読んでいる新聞。だがその紙面には、培われてきた信頼への責任が常に垣間見える。(植木太)