EQを研究する企業に聞く

 ここまで紹介してきたEQ。そのEQをより詳しく知るために、世界で初めてEQテストを開発したイー・キュー・ジャパン社の代表取締役である高山直氏にお話を伺った。
 始めに、なぜEQテストを開発しようと考えたのか尋ねてみた。「EQは、成長させることができる能力なんです。それならば、自分がどれだけ成長したか知りたいですよね。その成長を実感してもらうためにもテストを作ろうと思いました」。当時、EQを測定する手段が存在していなかったことが、このテストを開発するきっかけになったのだという。
 またこのテストが、普及している適性検査とどう違うのか説明してくれた。「従来の適性検査は、性格を測っていました。しかし、このテストが測定するのは性格ではなく感情なんですよ」。性格は先天的な影響を受けるため成長させるのは難しい。それに対して感情は、自分の意思次第で変えることができるのである。感情を測るテストだからこそ、その成長が結果に表れてくるのだそうだ。
 それでは、一体どのようにすればEQを向上させることができるのだろうか。いくつかの方法を紹介してもらった。最初に教わったのは、やる気を出すための方法である。「気持ちが後ろ向きになっている時は、明るい言葉を使うようにすると良いですよ。そうすれば、エネルギーが高まってきて感情が前向きになります」。逆に暗い言葉を使っていると、自分ばかりでなく周りにも悪影響を与えてしまうそうだ。
 次に、怒りそうになった場面でのEQの向上法を教えてくれた。「キレることって、学生にもありますよね。キレている状態はEQの働きが停止しているんです。そんな時は6秒間沈黙をおくのがいいですね」。間を置くことにより冷静さを取り戻すことができ、落ち着いて対応できるようになるのだという。しかし、そういった場面で6秒間黙っていることは難しい。そんな時は頭の中で6つ花の名前を唱えることが効果的だそうだ。
 さらに、心の感度を上げる方法も紹介してくれた。「一日一回、その日どんな得があったかを自分の中で整理することが大切ですね。それにより心の感度が上がって、自分や他人の気持ちを読み取りやすくなります」。この気持ちを読み取る能力こそが、EQで最も大切なことだそうだ。また、得したと感じる対象は、「今日は電車で座れて良かった」というような、日常生活で頻繁に起こることでも構わないという。
 話の締めに、学生が陥りやすい悩みについて語ってくれた。「今の学生は、自分の気持ちを友人に伝えられないと悩んでいる人が多いですね。対策として、普段から挨拶やお礼をしっかり伝えることが、重要になってくると思います」。自分の気持ちを表に出せないのは、友人との心の距離が開いてしまっていることが原因だという。日頃から、しっかりと挨拶をするだけでも心の距離を近づけるのに役立つそうだ。
 終わりに、読者の方へ向けて高山氏からメッセージをいただいた。「学生時代に、多くの嫌な社会人に会っておくことが大切だと思います。社会では人間関係を避けて通れませんからね。やはり、今のうちにたくさん辛い経験をしてもらい、人に立ち向かっていける強さを身につけてもらいたいです」。
 今回、高山氏が紹介してくれた内容は、学生にとって参考になるものである。これから社会に出る私たち学生にとって、EQはますます必要になってくるものだろう。是非、日々の生活の中でこの能力を意識してもらいたい。(増井亮太)