EQを伸ばす処方箋

 EQについてもっと詳しく知りたい。でも、難しい単語が並ぶ専門書は嫌だ。そんな思いを抱えているEQ初心者にもお薦めの書籍を紹介しよう。
 まずは、『EQ―こころの鍛え方―』(東洋経済新報社)。この本は今特集記事の取材先であるイー・キュー・ジャパン社の代表取締役、高山直氏の著書である。EQ理論の分かりやすい解説だけでなく、簡単なEQテストも記載されたこの本の最大の特徴は、EQを伸ばす具体的な方法として66個の法則を挙げている点だ。それは、特別な技術を必要とするものではなく、例えば「積極的に握手をする」あるいは「決断は三秒以内に行う」といったものである。つまり、自分の意識と行動を改善することで、簡単にできてしまうものばかりなのだ。
 続いて紹介するのが、同じく高山氏の著書『EQ―こころの距離の近づけ方』(東洋経済新報社)である。本書の目標は、社会における人間関係の悩みをEQの活用によって解決することだ。そこで、筆者が注目したのが「こころの距離」についてである。
 筆者の言う「こころの距離」とは、人がそれぞれ持つ、感情と感情のズレのこと。例えば、自分はきちんと伝えたつもりだった指示が、相手にはうまく伝わっていなかったとする。それは「伝えたい」というこちら側の気持ちと、「聞きたくない」という相手側の気持ちに差が生じた結果である。この「差」こそが「こころの距離」なのだ。人間関係において大切なのは、こころの距離を、お互いの気持ちや考えが伝わりやすい適度な距離へと導くことである。それを実現するためには、EQを発揮し、相手の感情に対して積極的な働きかけを行うことが必要になる。逆に働きかけを受け取った場合は、そこに込められた相手の心情を、正しく捉えることが重要なのだ。
 今回紹介した2冊の本は、EQを日本人向けに解釈しているため、内容の理解がしやすい。EQ向上のヒントが詰まったこれらの本を一度参考にしてみてはいかがだろうか。(賀来潤恵)