汗をかいて健康に

 デトックスは、汗による毒素の排出が基本である。ここでは、汗の出るメカニズムや発汗の効果を紹介しよう。
 汗は、汗腺という器官から分泌される。汗腺には2つの種類があり、その1つは毛穴から汗を出すアポクリン腺で、主に脇の下にある。もう1つは、身体全体に分布しているエクリン腺。これは個人差もあるが、平均して日本人は全身に約250万個あるそうだ。生後2〜3年間に、育った環境によって、エクリン腺の数が決定されるという。暑いところで育つと、汗を分泌する能力のある能動汗腺は増加する。ちなみに、日本より暑い東南アジアの人々は、能動汗腺が300〜400万個もあるそうだ。反対に寒い場所では、その数は減少する。また、後に生活環境が変わっても、能動汗腺の数に変化は見られないという。
 汗の主な役割は、体温の調節機能である。運動時や、気温が高くなると、体表面の能動汗腺から汗を分泌させて体温を低下させる。これは温熱性発汗という。
 そのほかにも、汗には身体の新陳代謝を促すという重要な役割がある。これにより、細胞に溜まった老廃物や、体内で生成され蓄積された水素が排出される。この水素は、人間の体内では毒性のある酸として多く存在するのだ。
 汗は、水素のほかにも、発癌性物質といわれる鉛、亜鉛、水銀、農薬、カドニウムといった重金属などの解毒もしてくれる。これらの物質は、汗からしか排泄されない。また、発汗は余分な塩分の排出も行うため、塩分の摂りすぎによる高血圧も防いでくれるのだ。そして、皮脂腺の活性化も促進させる。これにより、疲労や老化の原因である乳酸、コレステロール、遊離脂肪酸などの余分な皮下脂肪を、腎臓を経ず汗腺から排出できる。そのうえ発汗は、肉体面のみならず、精神面にもよい効果をもたらす。汗をかくことで自律神経のバランスが整い、ストレスを緩和することができるのだ。
 汗をかかないと自律神経機能が鈍り、平均体温が低下、身体に異常が現れるようになる。「常に体がだるい」「立っていると気分が悪くなる」「やる気が起こらない」「朝起きるのが辛い」「頭痛がする」「情緒不安定」「めまいがする」といった症状を伴う起立性調節障害を引き起こすことにもなりかねない。
 このように、汗をかくことは、私たちの健康維持に大きく貢献しているのである。しかし、現代人は運動不足やエアコンのあたり過ぎなどにより、汗をかきにくくなっているそうだ。したがって、現代人のかく汗は汗腺機能低下のため、ほとんどが質の悪い汗である。この汗は肌にべたつくうえ、スムーズに体温調節ができない。しかも体内の必要なミネラルを余分に出してしまい、疲労の原因につながるのだ。一方、良い汗は必要な状況になると素早く出てくる。さらに、肌に不快感を与えず、適度な油分が含まれているため、しっとりとしている。身体のミネラルを余分に排出しないので、汗に含まれる塩分が少ないためだ。
 この身体に備わったデトックス効果を高めるためにも、日頃から汗をかく習慣が必要である。時にはエアコンに頼らず、積極的に汗をかいてみてはいかがだろうか。(小室真衣子)