紫外線の人体への害

 ここ数年の美白ブームに伴い、紫外線による肌への影響に注目が集まっている。しかし、目に見えない故にどのような対策をしたらいいか分からない人もいるだろう。そこで今回は、紫外線が及ぼす影響について基礎から学ぶべく、「私のクリニック目白」の平田雅子院長にお話を伺った。
 今でこそ、紫外線は肌に良くないものというイメージだが、一昔前は日光浴が推奨されていた。この十数年で、何故こんなにも認識が変わったのだろうか。「オゾン層の破壊が問題視されると共に、紫外線と皮膚がんの因果関係が明らかにされてきたんです」。以前の日焼けした肌への認識は、健康の象徴であったが、日を浴びることは健康になるどころか、細胞を傷つけてしまうのだという。「確かに、全く日に当たらないのは体に良くありませんが、人体に必要な紫外線量は通学や洗濯をしている際に浴びる量で十分なんです」。健康に関して言えば、必要な日光量は自然と浴びられているので、故意に日焼けをする必要は無いようだ。
 では、紫外線を浴び過ぎてしまうと、どのような悪影響が出てくるのだろうか。「紫外線の悪影響といえば、シミが有名ですね。このほかにもシワやたるみなどの原因ともなりえます。また、肌を乾燥させ、肌の持つバリア機能を低下させてしまうのです」。さらに、強い日を浴び続けると、DNAなどの遺伝子は破壊されてしまう。だが、細胞は日々修復されるので、傷ついても気がつかないそうだ。問題なのは、無防備に紫外線を浴びている人なのだ。「何の対策もしていない人は、常に軽い火傷をしている状態なんです。そのような状況が続くと肌の老化が早まってしまうのです」。また、最近、紫外線の影響により白内障も増えている。「実は、紫外線は目からも吸収してしまっているのです。目から進入してきた紫外線は皮膚へ移行するのではなく、目にとどまり、眼球内にある組織を傷つけてしまうのです」。肌の対策さえしておけば大丈夫という印象が強いが、実際には、目の対策も忘れてはならないのだ。
 このような紫外線の悪事から身を守るためには、どうすればよいのだろうか。「まずは、面倒くさがらず、毎日きちんと日焼け止めを塗ってください。昨今、男女共、皮膚がん患者は増えています。男性も注意が必要です」。男性は日焼け止めを塗るのに抵抗があるかもしれないが、体への影響を考えたら恥ずかしがってはいられないようだ。また、一日中家に居る日は対策をしなくても平気だろうと考えている人も多い。だが、中にはガラスを通過する紫外線もあるので、たとえ外出をしない日でもUVケアを怠ってはいけないようだ。この他の対処法としては、保湿が効果的だ。「きちんと保湿をすると、肌の紫外線に対する抵抗力が高まります。その証拠に、Tゾーンにシミができている人はあまり居ませんよね。この部分には、皮脂が多く存在するので、自然と保湿がされているのです」。なお、皮膚の薄い頬や目元はうるおいをたっぷりと与える必要があるという。
 紫外線の影響を侮っていた人も多いかもしれない。が、このように紫外線には皮膚のみではなく、多くの害がある。放っておくと、知らず知らずのうちに、体が傷つけられている可能性もあるのだ。これからは、紫外線を見くびらずに、その脅威について考え、身を守る術を覚えっていった方が懸命と言えるだろう。(掛川千尋