たまには着物もいいよね

 今回の浴衣企画を通して、改めて和装に魅了された。蒸し暑い夏の夕暮れに、浴衣を着て縁側でちょいと夕涼みというのも、なかなか風流だ。しかし、今は6月。流石に浴衣で夕涼みには早すぎる。だからといって、和装で粋に過ごすのを断念するのは口惜しい。そうだ,浴衣が駄目なら、着物があるではないか。 
 そこで、着物美人を試みたものの、早速問題が生じた。着物と一口に言ってもその種類は実に多種多様。何も知らずに、季節に合わない生地や 模様の着物を着てしまったら恥ずかしい。折角着るのなら、基本を押さえつつ着崩す、というお洒落な着こなしをしてみたいもの。ここはひとつ、じめじめした季節を爽やかに過ごすための着物を探してみよう。
 善は急げとばかりに駆け込んだのは、呉服屋ではなく書店。基本的な知識もないまま、いきなり着物を選びに行くわけにはいかないだろう。そんなこんなで購入したのは、季節別の着物の選び方が書かれている本。それによると、夏物の着物は袷や単衣仕立ての着物、薄物と呼ばれる絽や紗、麻などがあるそうだ。さらに、帯も、夏用の絽や紗、羅などを締めるとか。ちなみに、今の時期は、薄物ではなく袷や単衣を着るようだ。また、雨がぱらつくお天気の日は、縮みにくい平織りの紬やウール、古い着物や、着古していいような絹ものや天然素材がお勧めとのこと。とはいうものの、しがない大学生のお小遣いでは、上等な着物はそうやすやすと買えるものではない。着物でくつろぐ休日なんて、所詮夢だったのか、と思えた。
しかし、私はリーズナブルな着物が存在することを忘れていた。アンティークの着物である。アンティークものならなんとか手が届く値段だ。しかも、値段が手ごろというだけでなく、可愛い柄の品が多いというのも素晴らしい。こんなにも魅力的なアンティーク着物だが、古着ということは汚れているのでは? と思ってしまいがちだ。だが、実際には、着る時期を逃して年齢にあわなくなってしまったので、売りに出したというほぼ新品の商品が多いのだ。それなら、仕立てあがっているアンティーク着物の方が、すぐに着ることができて都合が良い。ここはひとまず、アンティークの着物から、和風で粋な休日をはじめてみるとするか。(掛川千尋)