外国の司法参加制度

 日本ではあまり馴染みのない裁判員制度だが、他の先進国では古くから国民の司法参加制度が導入されている。アメリカ、イギリスなどにおける陪審制、イタリア、ドイツ、フランスなどにおける参審制がそれにあたる。また、戦前は我が国でも陪審制が行われていたが、戦争拡大の影響で中止されて以来、現在まで再施行されていない。
 まず陪審制とは、12人の陪審員が密室での協議により有罪か無罪かを判断し、裁判官はそれに従い判決を下す制度である。陪審決議は全員一致で行なわれ、有罪の場合は裁判官が量刑を決定する。ただし、明らかに証拠を無視した不適当な内容と判断される場合のみ、その陪審決議を裁判官は取り消すことができる。この制度は市民の良識に基づいた柔軟な結論を導けることが大きな利点だ。しかし、法の専門家が同席しない中では、陪審員の偏見による判断がなされる場合があり、公平な裁判にならないという可能性がある。また、陪審員以外を排した完全な密室審理であるため、審議結果の理由が明確でないという問題点も指摘されている。そのほか、興味を失った陪審員が居眠りをして解任されるなどの問題も発生しており、日本でも同様の問題が起こる可能性がある。
 次に参審制だが、この場合裁判官と同格に扱われる2、3人の参審員が裁判官の隣に座り、共に審判を行う。審理の開始から判決に至るまで協議を重ね、国民の良識と裁判官の豊富な法知識を合わせることでより良い判決を導こうというものである。裁判官が常に審理に参加することで、明確な法的根拠に基づいた判決が下されることが利点と言えるが、法知識に乏しい参審員は反論しづらく、協議に参加しにくいということは欠点と言えるだろう。日本における裁判員制度はこの参審制に近いものになる予定だ。だが、参審制は長期間の任期の中で複数の裁判を担当するのに対し、裁判員制度はその事件のみを担当するという点が大きな違いとして挙げられる。
 諸外国において長い歴史を持つ司法参加制度であるが、今なお問題は多数残っている。これらの国を参考にして、問題点をより減らしながら運用することが裁判員制度には求められるだろう。(池山慧)