前進する世界の取り組み

 温暖化を防ぐために、各国では様々な対策が講じられている。世界共通の対策は、97年に京都議定書が採択されたことから本格的に始まった。
 京都議定書とは、温暖化の原因となる温室効果ガスの削減を、先進国に初めて義務づけたものである。この議定書では、08〜12年の間に90年比でEU8%、日本6%、カナダ6%,
ロシア0%削減を目標と定めている。しかし、残念ながらアメリカ、中国など一部の国は不参加であった。
 また、議論は削減目標だけでなく、費用がかさみ、目標達成が難しい国への削減方法の提示にまで及んだ。そこで、解決策の1つとして「京都メカニズム」が提案された。これは、共同実施、クリーン開発メカニズム、排出量取引と呼ばれる制度を軸としている。
 共同実施とは、先進国が共同で排出量削減の事業を行うことである。莫大な費用がかかる実現性の低い新エネルギー開発より、まずは着実に削減できる技術を先進国同士で共有し合おうという意図だ。そして、この事業での削減量は、実施国と技術・金銭の投資国とで、分割ができる。
 クリーン開発メカニズムとは、先進国が途上国に技術や資金を提供し、温暖化対策の事業を勧めることをいう。この事業による削減量は、先進国の削減目標に加えられる。技術のある日本は、この制度の利用で、効率的に目標に近づくと予想されている。
 排出量取引とは、先進国間で排出量の一部を取引することを示す。例えば、ロシアは経済不況による工場の封鎖などで、目標削減量をすでに達成している。そこで、さらに削減できれば、目標に達しない他国へ排出権を売る権利が認められるのだ。
 最近では、京都議定書に代わる13年以降の国際的な温暖化対策として、シドニー宣言が採択された。この宣言には、新たにアメリカと中国も参加を表明している。こうして温暖化対策への大きな一歩となる約束がされたことで、シドニー宣言は国際的に高い評価を得た。
 このように、実現不可能に思われていた温暖化対策は、各国の協力によって解決の方向に進んでいる。一国では難しいことでも世界全体で話し合い、行うことで改善できる。これからの国際社会の動向に、期待したい。(木村明子)