歴史に見る著作権

 社会の情報化が進んだ今、著作権は人類が文化的生活を向上する上で、欠かせない存在となっている。しかし、その権利が現在の形に整うまでには長い時間を要した。ここではその変遷をたどってみよう。
 著作権の始まりは、15世紀にグーテンベルクによって発明された、活版印刷機の影響が大きい。当時のヨーロッパは、宗教改革や文芸復興の時代を迎えており、聖書や古典の大量複製が急務であった。印刷機の開発は、これらの要望に答え、世間に急速に広まったのである。その一方で、技術の発達は海賊版や類似の出版物の出現など、新たな問題も呼び込んだ。既に500年も前に、現在と同じ状況が生まれていたのだ。
 時代が進むにつれ各地で規制の動きが高まり、出版物に限らず音楽のような無形物に対しても著作権が波及した。ただし、当時その権利が及ぶ範囲はどの国も国内に留まっており、国外においては適用されなかった。それでは、保護の効果は薄まってしまい意味が無い。こういった時代背景から、「国際的な保護が必要だ」という考えが生まれる。『レ・ミゼラブル』で有名な作家ビクトル・ユーゴーが中心となり、国際的な著作権保護の運動が活発となったのだ。そして、1887年ベルヌ条約が締結された。
 この条約は、現在でも各国の著作権法の保護水準を合わせる上で、重要な役割を果たしている。だが、当初は問題点もあった。というのも、ベルヌ条約では、無方式主義が採られているからだ。他方アメリカを中心とした中南米の国では、著作権表示、登録などを著作権保護の要件として課す方式主義を採っていた。それでは、条約本来の役割を果たすことはできない。そこで登場したのが、お馴染みの霏マークだ。
 このマークを表示することにより、たとえ方式主義を採用している国であっても、著作権が保護されるようになった。ただし、後に大半の国がベルヌ条約に加入したため、その存在意義が薄れつつある。現在ではマークが使われるのは、著作権の存在をアピールするという心理的要因が大きい。
 生活と密接に関わっている著作権だが、あまりその歴史は知れていない。まずは生い立ちを知ることから、知識を深めてみてはいかがだろうか。(増井亮太)*p13*[2面]編集後記
  古い書籍からは先人の思想や作品を学び取れ、最新の情報はインターネットを通して調べられる。今は昔に比べ、たくさんの情報を自由に閲覧し、利用することが可能になった。しかしその分、著作権法についてよく理解していないと、法律に違反しかねない。そこで、今号では「著作権」を特集した。
 今回の取材を通して、モラルというものを意識することの大切さに、改めて気づかされた。日本の現状では、法律で直接的に取り締まるというよりも、各人の判断に任されている部分が大きいからだ。そのため、著作物を利用する際には、個々人で常に著作者へ対して気を配るようすべきだと思う。
 この特集において紹介した記事の中には、基本的な内容も多い。けれども、基本こそが重要にして一番守るのが難しい。だからこそ、日々の生活の時から、著作権を侵害していないか確認するようにしてほしい。今号によって、著作権とはどのようなものであり、どう対処していくかについて、考える契機となれば幸いである。(木村明子)*p14*[記者の眼]美しい景観を守るために
 先日、家の近くの川沿いを歩いていると、トラックの窓からごみが投げ捨てられているのを見かけた。川の方に目をやってみると、そこには大量のごみが散乱していた。心無いドライバー達が捨てていったものなのであろう。昔から多少のごみは落ちていたものの、その量は年を追うごとに増えているように感じられる。同じような光景は、全国至る所に存在しているようだ。これらはひとえに、人々の道徳心の欠如が招いた結果であるといえよう。
 もちろん、皆がごみをポイ捨てするというわけではない。近隣の住民が集まって清掃作業を行うことはよくある。その参加者は、自分達で綺麗にした場所を汚すようなことは決してしないはずである。ところが、その努力とは裏腹に、ただ通りがかった人が「いくら捨てても注意されることはないだろう」といった軽い気持ちでごみを捨ててしまう。このような自分勝手な考えを持っている人がいる限り、現状を改善することは望めないだろう。
 一方で、環境保護のために尽力している人も数多くいる。世界的に有名なアルピニスト野口健もその一人である。彼は世界7大陸の最高峰全てを登頂するという偉業を25歳の若さで成し遂げ、一躍世間から脚光を浴びる存在となった。そんな野口さんは、登山の際に行う清掃活動にも力を入れており、精力的に講演会を開いている。そこで彼は、エベレストや富士山で作業に従事したときに直面した、登山者のマナー違反によって汚された山の実態などを語ってきた。環境保全の大切さを必死に訴える彼の熱意には説得力があり、多くの人が心を動かされている。実際にごみが少なくなっている地域もあるという。
 人類の生産活動の負の側面である、ごみにまつわる諸問題は、私達と密接な関係にあり、完全に無くすことはできないだろう。しかし、使い捨ての商品を買わないように注意し、エコバックなどを利用してビニール袋を貰わないようにすることで、まずはごみを減らすことができる。そしてなにより、ごみはきちんと家に持ち帰り、分別しなければならない、と心がけることで問題に対する意識は確実に変わっていくはずだ。今後、現在の景観を保持し続けるためには、大きな枠組みで考える以前に、一人ひとりが真剣に向き合わなければならないのではないか。(日本語日本文学科2年 平野健)