効率の良い入浴を学ぶ

 お風呂の効能を知っていても、間違った入り方ではその効力は十分に発揮されない。賢い入浴の知識を得るべく、東京ガス都市生活研究所所長の早川美穂さんにお話を伺った。
 お風呂の長所の一つは、簡単に体を温められることだ。しかし、ただお風呂に入れば良いというものではない。一般的には、熱いお湯に長く浸かるのが好ましいようなイメージがあるが、実際のところはどうなのだろう。「体の芯まで温めるためには、血液を全身に均等に巡らせなければなりません。そのためには、熱すぎない浅めのお湯に、ゆっくり浸かることが大事です」。具体的には、お湯の温度は38〜39度、深さはみぞおちの辺りを目安にすると良いそうだ。
 お湯が熱すぎると、すぐにのぼせてしまうため、体内の血液を十分に循環させられない。つまり、体の表面が温まっただけで、内臓まで熱が行き届いていないのだ。そして、お湯の中では常に静水圧がかかっているため、深く浸かりすぎると体が緊張状態になってしまうそうだ。そこで、適度な温度と水量に調節することが必要となってくる。
 また、ゆっくり浸かることも重要だが、行き過ぎた長風呂はかえって体に悪影響だという。どのくらいの時間が適切なのか尋ねると、「額に汗が浮かぶくらいを目安に、20分程度の半身浴を心がけると良いです」とのこと。むやみに長く入るよりも、そうした方が心身へのリラックス感も得やすいようだ。中には、美容のためにあえて長風呂するという人もいるだろう。しかし、20〜30分の間、こまめに水分を補給しながら入浴すれば、十分な効果が得られるのである。
 ところで、ついお湯の温度に気を取られてしまいがちだが、早川さんは浴室の温かさも気をつけるポイントだと指摘する。「ベストな湯加減も、お風呂場の温度によって微妙に変わってきます。特に冬場は、浴室を温かく保たなければなりませんね」。やはり体を内側まで温めるためには、寒いと感じない室温に保つことが肝心なのだ。浴室に窓があると、そこから冷気が入りやすいので、カーテン代わりの布などを掛けると良いそうだ。「浴室暖房があるのが一番です。もしなければ、シャワーで湯船にお湯を張って室内を温めるとか、半身浴時に乾いたタオルを肩にかけるなど工夫しましょう」。同時に、湯上りに体を冷やさないよう心がけることも重要だ。そのためには、当然ながら水分を拭き残さないよう徹底したい。
 冬は特にそうした気配りもいるが、基本的な入浴の方法というのは年間通して大きな差異はないのだという。だが、「季節ならではの工夫もあります。例えば、夏は薄荷を浸したり、冬はミカンの皮や柚子を浮かべたりするのがお勧めです」と早川さんは提案している。薄荷は風呂上がりの汗を抑える働きをしてくれ、ミカンや柚子は保温や血行促進効果などを一層高めてくれる優れものだそうだ。
 そのほか、シャワーの活用法も教えていただいた。「特に温めたい部分や、凝っている部分などには、強めのシャワーを当ててください。そうすることで、マッサージ効果も得られます」。さらに朝のシャワーは、体臭を抑えるのにも役立つ。熱めのお湯を、マッサージには2、3分、体臭予防には1分浴びるだけでも効果があるという。
 最後に早川さんは「近頃は、冷房のせいで夏でも冷えを感じたり、都会での生活にストレスを感じていたりする人が多いのではないでしょうか。そういう人達こそ、お風呂を上手く活用してほしいですね」と語ってくれた。せっかく入るなら、より温まることができ、より気持ちよくなれる方が良いだろう。今日からでもすぐ実行できる入浴術の数々、ぜひ試していただきたい。(美馬香織)