大学院に開設された新専攻

 先述してきた身体表象文化学専攻に代表されるように、近頃、学問の領域が新たに広がりつつある。その流れを受けて、本学では今年度から、美術史学・アーカイブズ学・生命科学が新専攻としてスタートした。このコラムでは、ここまで触れることができなかった専攻について詳しく見ていこう。
 今年度から新設された専攻は、身体表象文化学専攻を含めて4つ。その1つが、美術史学専攻である。従来、美術史は大学院の哲学専攻の中で研究が行われていた。しかし受験生には、哲学専攻の中に美術史コースがあるとなかなか気付いてもらえない。また、教育の独自性と学生の専門性を明確にするという意味合いもあり、美術史学専攻として独立することとなったのだ。なお、この専攻の目的は、単に知識を深めるだけにとどまらない。美術を通して何かを伝えたい―。そう考える人たちに、実践的なスキルを学べる場を提供しているのだ。
 次に、日本の大学院としては初の開設となるアーカイブズ学専攻について紹介しよう。
あまり聞きなれない言葉ではあるが、アーカイブズは2つの意味を持っている。1つは、人間が社会の中で生み出してきた重要な記録。そしてもう1つは、それを保存し、活用するシステムや施設のことを指す。この業務を担う人は、アーキビストと呼ばれ、記録の設計や運用、アーカイブズ資料の収集や整理を行う。情報化が進む現代において、アーカイブズシステムの整備は、一段と重要性を増してきているのだ。それにも関わらず、日本では他国に比べて、アーキビストの育成が進んでいないのが現状である。これらに鑑み、専門職に相応しいアーキビストを育成すべく、本専攻が開設されたのだ。
 最後に生命科学専攻。この専攻は、分子細胞生物学を共通の基盤として、基礎生命科学や統合生命科学、そして応用生物学などの研究を進めている。生命科学を学んだ学生に限らず、化学や物理学を専攻した学生も受け入れる体制が整っており、理系の学生の幅広い分野での活躍が期待されている。
 卒業後の進路として、就職を選択する学生は多い。だが、必ずしもそれだけが道というわけではではない。本学に限らず、大学院が学問として研究する対象は、年々と拡大してきているのだ。知的好奇心を満たすべく、大学院への進学を志すのも選択肢の1つである。(増井亮太)