絢爛なる源氏物語の世界

 大作ゆえに、なかなか読む気がしないという人もいるかもしれない。そこで、まずはあらすじで『源氏物語』の一部を読んでみよう。
 主人公の光源氏は、桐壷帝と、その寵愛を一身に受けていた桐壷の更衣との間に生まれた。幼くして母を亡くすも、父である帝に大切にされて育つ。彼はその美貌から、まるで光輝くようだともてはやされ、この呼び名が付けられた。
 まだ光源氏が幼い頃、桐壷帝は、桐壷の更衣に生き写しの藤壺を妻に迎えた。光源氏も母の面影を求め、義理の母であるにも関わらず、いつしか藤壺に恋心を抱くようになってしまう。やがて、光源氏も12歳になり、元服して左大臣の娘である葵の上と結婚した。けれども、葵の上との関係が上手くいかないこともあり、彼はよりいっそう藤壺への想いを募らせていく。後に、彼は女房の手引きで藤壺と密会する機会を得る。だがその際に、なんと彼女は光源氏の子を宿してしまうことになるのだ。
 それから18歳になった光源氏は、病の療養に訪れた北山で、偶然にも藤壺にそっくりな少女を垣間見る。それもそのはず、その少女は藤壺の姪にあたる人物であったのだ。光源氏は、手の届かない藤壺への想いゆえ、彼女を我がものにしたいという衝動に駆られる。
 ある時、光源氏は北山の少女を育てていた祖母が亡くなったという知らせを聞く。彼女のことが忘れられずにいた光源氏は、強引に少女を引き取ってしまった。光源氏邸に迎えられた少女は紫の上と呼ばれ、彼の正妻として、美しく教養高い女性へと育てられる。
 またある朧月の夜、宮中での宴の帰りのこと。弘徽殿に立ち寄った光源氏は、優雅な声で歌を詠む女性を部屋に引き込んで、関係を持ってしまう。しかし、彼女は政敵である右大臣の娘だったのだ。これが原因となり、官位を剥奪された彼は、罪の意識に苛まれ、自ら都から遠く離れた須磨へと下る。
 須磨では、現地で巡り合った明石の君との間に娘をもうけた光源氏だが、罪が許されて都へ戻ることになった。彼が不在であった3年の間に紫の上は美しく成長していて、光源氏は彼女への想いを改めて強くする。そして、娘の明石の姫は、正妻である紫の上の養子とすることにした。
 そうこうする内に、長年想い続けていた藤壺が他界し、光源氏は失意に暮れるものの、紫の上の愛情や我が子の存在によって救われる。その後、六条院と呼ばれる広大な邸宅を作り、紫の上や明石の君らを呼び、そこに住まわせた。それから数年が経ち、葵の上との息子である夕霧が結婚し、娘明石の姫も入内する。さらに、皇族と肩を並べる准太政天皇の位を得て、光源氏の栄華は極まった。
 ここまでは、彼の隆盛を描いた最も華やかな部分だ。だが物語はまだまだ終わらない。この後光源氏を待ち受けるのは、思いもかけない苦節の数々である。その上、彼の死後までもが描かれていて、読み応えは十分だ。この先は、ぜひ自分で読んでその面白さを実感してほしい。(美馬香織)