昇格まで一歩及ばず ソフトボール部女子

 5月17日、東京学芸大学にて、東京都大学春季リーグの1部2部入れ替え戦が行われた。対戦相手は今季1部に所属していた東京学芸大である。2部を全勝で戦い抜いた本学は、1部復帰を果たすべく、大一番に臨んだ。
 1回表、先攻の本学は二死から死球で出塁するが、得点を挙げることができず、その裏の守備に就いた。先頭打者をエラーで塁に出すも、先発の源田祐子投手(心2)が踏ん張り、なんとか二死まで漕ぎつける。だが、次の4番打者に本塁打を打たれ、2点を先制されてしまう。その後も本学の守備が綻びを見せ、この回だけで5失点。初回から苦しい展開となった。
 1点でも多く点を返し、早く追い付きたい本学。2回表、齊藤紋加主将(法4)が追い込まれながらもセンター前に鋭い打球を飛ばし、無死1塁とチャンスを演出する。次打者は凡退したものの、吉田優子選手(営4)のキャッチャー前に転がしたバントが相手のミスを誘い、一死1、3塁と絶好の好機が訪れる。ここで今井瑛璃子選手(英3)が、二遊間を抜ける適時打を放ち、反撃の狼煙を上げた。さらに藤田彩加選手(独2)がスクイズを成功させ、2―5とし3点差にまで詰め寄る。
 このまま本学のペースに持ち込むためにも、なんとしても無失点に抑えたい2回裏。ところが、いきなり四球を与えバントで走者を進められると、続く打者に二塁打を浴び、走者が生還してしまう。相手の畳みかけるような攻撃を断ち切るべく、交代でマウンドに上がった吉田選手も、この悪い流れを止めることができない。相手の4番打者に2打席連続となる2点本塁打を喫し、2―8に。本学はさらに厳しい状況へと追い詰められてしまった。
 3、4回にも小刻みに点を加えられ、5回を迎える時点で2―11と大差をつけられた。5回終了時点で7点差がついた場合は、コールドゲームとなってしまうため、本学はいよいよ後がない。ここで代打の瀧澤麻衣子選手(日2)がセカンド内野安打で出塁し、大逆転への執念を見せる。しかし、後続が打ち取られスコアは動かないまま、ゲームセットとなった。
 試合後に、「大事なゲームというプレッシャーから、自分たちらしいプレーをすることができませんでした」と敗戦を振り返った齊藤主将。さらに、「今回の結果は不本意なものでした。秋季リーグでは好成績を収め、勝って泣きたいです」と悔しさをにじませて語ってくれたが、その目はすでに先を見据えていた。
 まさかのコールド負けにより、1部昇格は来季へ持ち越しとなってしまった。それでも本学は、選手一丸となって目標へ向かい邁進していく。来年こそは、1部の舞台で戦う彼女たちの姿を見せて欲しい。(平野健)

一進一退の攻防制す

 試合前日、「甲南戦は四大戦、関東大学リーグと並ぶ三大目標の一つですから、絶対に勝ちたいです」と今大会に懸ける強い思いを語ってくれた塚田一真主将(営4)。石井直之選手(政4)とペアを組み、先陣を切ってダブルスに臨んだ。
 しかし、出だしから本学はつまずいた。塚田主将のサーブで始まった第1ゲームを、ブレイクされてしまったのだ。けれども、本学も負けてはいない。次の第2ゲームは相手ペアのサービスゲームであったが、塚田・石井ペアが制する。これで勢いに乗りたい本学は、石井選手のサーブから第3ゲームをスタートさせた。ところがこのゲームを落とし、再度リードを許してしまう。その後も両ペアが互いのサービスゲームをブレイクする展開が続き、第6ゲーム終了時点で3―3とまったくの五分。だが、ここから抜け出したのは本学であった。第7、8ゲームを共に快勝すると、第9ゲームもデュースの末に塚田主将の豪快なスマッシュで相手を突き放した。そして5―4で迎えた運命の最終ゲーム、一時は0―30とされるが、その後相手のミスにつけこみ、逆転を果たす。この結果、本学は6―4で第1セットをものにした。
 第2セットに入ると、試合はこれまでとは異なった様相を見せる。塚田・石井ペアが相手を圧倒したのだ。序盤、塚田主将のサーブはフォルトも目立っていたが徐々にサービスライン内に決まり始め、猛威を振るう。また石井選手も相手が届かないコースへ、正確にボールを放つ。疲れも重なったのか、もはや対戦者たちはなす術がない。5ゲームを連取した本学は第6ゲームも40―30のマッチポイントとし、最後は塚田主将が試合を決めた。余裕を保ちつつ第2セットも本学が手にし、終わってみればストレート勝ちで初戦を飾った。
 一方で、柴田圭祐選手(法3)・崎田輝選手(法3)のペアは接戦を演じたものの、第1、2セット共に4―6で落としてしまう。また、伊藤純一選手(営3)と萬里小路直秀選手(営3・までのこうじ)のペアも惜敗し、ダブルス3試合は1―2で終了。
 そして午後からは、シングルスが始まった。本学はダブルスで負け越した借りを返し、逆転勝利を狙う。ところが、最初に登場した崎田選手は敗戦。石井選手は第3セットまでもつれ込んだ試合を競り勝つことに成功したが、続く伊藤選手は星を落とす。これで本学は窮地に立たされたが、ここからドラマが待っていた。まず塚田主将が7―5、6―3と相手を一蹴し、またもや本学リーダーとしての貫禄を見せつける。さらに萬里小路選手、松岡祐樹(政3)選手も、激戦を演じた末に勝ちを収めた。こうしてダブルスとシングルスの合計成績は5―4となり、本学は大会3連覇を達成した。
 試合後、塚田主将は「OBの方や女子部員が応援に来てくださり、本当に心強かったです。この調子で四大戦制覇、リーグ戦での3部復帰を掴みたいですね」と述べた。四大戦は6月、リーグ戦は9月に幕を開ける。強敵の甲南大を倒し、弾みをつけた本学。残り2つの大きな目標も、必ず成し遂げてくれるであろう。(宮川雅志)

甲南大下し3連覇 硬式テニス部男子

 5月18日、本学硬式テニスコートにおいて対甲南大学総合定期戦が行われた。この大会は、ダブルス3試合とシングルス6試合の計9試合で構成される。ダブルスこそ1―2と黒星がひとつ先行したものの、シングルスでは4―2と雪辱を果たした本学。これによって総合成績は5―4となり、見事に甲南大を退けV3を成し遂げた。

趣味を深めて自分の糧に 法学部法学科 横山久芳准教授

 今回は、法学科の横山久芳准教授に学生時代を振り返っていただきました。多岐に渡る当時のお話からは、充実した生活が窺えます。
 かけがえのない時間
 私は、1年生から3年生の前半までクラシックギターサークルに所属していました。先輩に弾き方を教わり、日々練習に励んでいましたね。人前で演奏を披露したり、仲間たちと合宿に行って朝まで飲み明かしたりと、楽しい思い出ばかりです。ここで他学部の学生と親しくなることで、新しい刺激を受けられました。みんな仲が良かったので、未だに連絡もとりあっていますね。また、私は法学部に在籍していたのですが、友人と喫茶店に集まってゼミの延長線のような議論をしたことも印象に残っています。学生時代は、自分のやりたいことをのびのびとやっていました。悔いを一つだけ挙げるとするならば、語学ですね。あの頃は語学を必要とする認識が甘く、そこまで力を入れなかったのですが、研究者になった今は、海外の方と交流する機会が結構多いんです。その時思うように外国語を使いこなせなかったりするともどかしさを感じて、もっとやっておけばよかったなあと後悔しますね。
 読書の勧め
 大学時代は自由な時間が多いですが、4年間という限りがあります。当時の自分は満足した生活を送っていたつもりでも、今になればあれもやっておけば良かったと思うことも出てきますね。皆さんに何かを勧めるのであれば、読書をしてもらいたいと思います。知識が広がりますし、何より自分を表現する方法を得ることができます。私自身、学生の時にたくさんの本を読みました。小説はもちろん、精神分析に興味があったので、心理学書も手に取りました。読んだ本のジャンルは様々ですが、全てが何かしらの形で現在も役に立っています。時間が空いたら、本に手を伸ばしてみる、そんな大学生活を送るのもいいのではないでしょうか。(取材・構成 深田杏)
 PRОFILE
 1997年東京大学法学部卒業。99年同大学大学院法学政治研究科修士課程修了。99年法学修士を取得。2002年より現職。

休暇

監督 門井 肇 出演 小林薫西島秀俊/大塚寧々/大杉漣 2008年/日本映画/115分 配給 リトルバード
 人の命を奪った者が、果たして本当の幸福を得ることができるのか。生と死の間で揺れ動く一人の人間が、やがて辿り着く場所とは…。
 主人公の平井は、死刑囚を収容する拘置所に勤務する刑務官である。死を待つのみの囚人と関わらなければならないことは、辛く苦悩が多い。平井は仕事仲間と深く関わることもせず、淡々と日々の業務をやり過ごしていた。そんな中、未婚のまま年を重ねていた彼は、姉の勧めでシングルマザーである美香と結婚することになった。
 こうして順調に事が運び、平井と美香の挙式を目前に控えた頃、死刑囚・金田への執行命令が言い渡される。そして、この処刑の際に支え役(死刑執行補佐)を務めれば、一週間の休暇が与えられるという。支え役とは、刑務官の誰もが嫌悪するほど、心身ともに負担の大きい任務である。その過酷さは、平井自身も十分に理解していた。しかし、彼は新たな家族と新婚旅行に出掛けるために、共に生きる決意の代償として、支え役を引き受ける。同僚たちは平井の決断に驚き、激怒するが…。
 この映画の原作は、本学OBである文豪・吉村昭氏の短編小説である。本の内容を活かした、徹底した取材と心理描写によって作られた巧妙なストーリーが、見事に映像化された。一人の死刑囚の命をめぐり、多くの人が悩み悲しむ姿は、重いテーマだけに心が詰まる。それは、死刑が一概に是非を問えない、難しい問題であるからだろう。希望を奪われた死刑囚と、彼の未来を奪う使命を託された刑務官たち。ここに浮かび上がる、人が人の生死の判断を下すことの正当性について、観る者は深く考えさせられるはずだ。
 けれども、幸福に向けて生きようとする人の姿も並行して描かれており、希望を感じさせる。平井の全てを受け入れる美香の穏やかさは、静かに心を温めてくれるだろう。生きることの意義を学ぶ機会となる、心に迫る作品だ。(木村明子)

感動をコミックスで

 源氏物語の世界を知りたい。でも、古文を読むのは敷居が高く感じる…。そんな人に提案したいのは、源氏物語をコミックスで読む方法である。大学受験の際に、勉強の一貫として勧められた人も多いのではないだろうか。確かに漫画は文章を追うよりもとっつきやすいし、時間もかからない。源氏物語の入門書としては最適だろう。
 原作が非常に有名な作品である分、この物語は多くの漫画家によってコミックス化されている。原作に忠実なものから、作家の斬新な解釈により、新たな脚色がなされているものまで様々だ。そんなたくさんの中から、今回は、優れた3作品を紹介したい。
 まず1つ目は、言わずとしれた大和和紀の『あさきゆめみし』(講談社コミック)だ。ページを開いた瞬間、まさに少女漫画の王道といったタッチの、雅な平安の世界が広がる。本作は描写の繊細さに定評があり、作者の大和氏は現代の紫式部と賞される程だ。ストーリーもほぼ原作に忠実であり、読者は当時の様子を映像的に理解できるのだ。千年前にタイムスリップしたような感覚を味わいながら、光源氏の激動の一生を垣間見ることができるだろう。
 次に紹介したいのは、小泉吉宏の『まろ、ん?―大掴源氏物語』(幻冬舎)だ。こちらはキラキラした少女漫画には抵抗があるという方に特にお勧めである。なぜなら、本書の中では絶世の美男子である光源氏の顔が、なんと「栗」になっているのだ。これは、平安貴族男性の一人称である「麻呂=まろ」をもじった駄洒落からの産物で、親しみやすさを追求した結果、このような姿になったらしい。なんともユニークな着想だが、かといって本作は決しておふざけの内容ではない。中身は各章をわかりやすい8コマ漫画で要約した構成になっていて、本書を読めば少ない読書時間で源氏物語を読破した気分になれる。可愛いイラストを眺めながら、源氏の世界の虜になること請け合いだ。
 また、源氏物語を新たな角度から見てみたいという人には、きら作の『GENNJI源氏物語』(集英社コミック)を推したい。この話の特徴は、原作より少々お転婆な紫の上の視点で物語が進行することだ。そして、光源氏を稀代のプレイボーイとしてだけではなく、彼の一途で傷つきやすい純粋な面も丹念に描いている。彼の周りにいる人々の心理にも着目しているので、本書を読めば登場人物たちを一人の人間として、より身近に感じられるはずだ。
 以上、源氏物語のコミックスの有名な3作品を挙げた。平安時代の作品でありながら、現在も姿を変え影響を与え続ける源氏物語。せっかくの機会に、この偉大な作品の世界を、漫画で気軽に覗いてみてはどうだろうか。(大原梨句)

時を超える源氏物語の時代

 歴史上に作品の姿が確認されてから、今年で千年が経つという『源氏物語』。そのような長い時の流れの中でも、色あせることなく愛され続けているのは一体なぜなのだろう。源氏物語研究の第一人者である、学習院女子大学学長・永井和子氏にお話を伺ってみた。
 まず永井氏は、源氏物語の最大の特徴は「古い・長い・女性が書いた」という三点であると語る。だが、これらの性質ゆえに、源氏物語の原文そのものは遠い存在なのだという。「古い作品であっても、たとえば『ハムレット』の名台詞などは、現代でも変わらずに使われることがありますね」。それと比べて源氏物語は、研究者でもない限り、原文がそのまま頭に入っている人は少ない。とはいえ、この原文との距離感こそが、源氏物語の最大の魅力だと言えるのだそうだ。「物語というのはもともと現実にはあり得ない話ですし、書かれているままの状態では理解しにくいからこそ、そこに自由な想像力が働きます」と永井氏。紫式部は千年前の当時、絵などの他の表現手段に頼ることもなく、ただ言葉のみで物語を書き記した。「それゆえ、後世の人々は原文に束縛されずに、時代によって様々な楽しみ方をすることができました。絵画化したり、要約したり、歌だけ鑑賞したり、滑稽に脚色したり。作者が言語に厳しく閉じ込めた世界を、好きなようにイメージして再創造したのでしよう。その意味で、源氏物語の生命は、尽きることなく生き続けていますね」。現代においても、絵や漫画として描かれたり、映画化されたり、占いが作られたりと、多様に解釈されている。このようにテクストを離れた次元で、どの方面にも展開することが可能なのが、広く親しまれてきた理由なのだろう。
 また、千年前の平安時代と現代では、文化や生活習慣などが大きく異なる。婚姻制度の変化による女性の社会的立場などは、その最たるものだ。それにも関わらず、源氏物語のヒロイン達は、今でも多くの女性の共感を集めている。その理由は、何処にあるのだろうか。「確かに、時代背景の知識がなければ、源氏物語の女性像はわかりにくいでしょう。けれども生き方や恋愛は、昔も今も同じで、女性は愛したいし、愛されたいし、溌剌と生きたい。平安時代の婚姻は一夫多妻的、現代では一夫一妻制ですが、制度は変わっても、愛すること自体の微妙さや切実さは変りません。人間の根源的な部分や、生命の精気が鋭く見据えられている面白さは、私たちにもよく伝わって来ます」。
 さらに永井氏は、千年という時間も、けして遠い昔のことではないと言う。「人類自体の歴史は、千年という単位などよりも、ずっと長いもの。四千年前の中国、紀元前のエジプトでは、文化もとっくに成熟していました。文化史、人類史という大きな枠組みで見ると、源氏物語はまだまだ生まれたばかりの、新しいものだと言えます」。一見、遥かにかけ離れた存在のように思われる源氏物語。だが、考え方を広げてみると、実は私たちと深く通じている、身近な存在であるのかもしれない。
 最後に、永井氏が最も興味深く思っているという宇治十帖について話していただいた。「かつては『光』源氏という太陽が藤壺朝顔・葵といった『植物』の名を冠した女性達を照らしていました。しかし宇治十帖の世界では絶対者が不在で、すべてが相対的に捉えられています」。宇治十帖の無常観漂う世界観は、絶対的なものの存在しない不安定な現代に、非常に似通っているそうだ。
 こうした普遍性の面からも、源氏物語が秘めている魅力は底知れない。千年紀を機に、その深甚な世界に今一度想いを馳せ、自分なりの源氏物語像を思い描いてみてはいかがだろうか。(市川美奈子)